10cm〜0cmへ


一緒にいることが、こんなにも嬉しいとか。

カイザーに出会ってからの俺は、少しだけ変わったと思う。
正確に言えば、出会ってからではなくて、カイザーと付き合い始めてから。

デュエル以外で、こんなにドキドキ出来るなんて知らなかったし、翔とか隼人に感じる好きとは全然違って、例えば「十代」と、穏やかな声で名前を呼ばれるだけで、胸がギューっと締め付けられる気がする。彼に対する「好き」は、そういう好きだ。

本当に、どうしたんだろうな。カイザーは俺にとって、リスペクトするデュエリストで、いつか倒すべきライバルで。
それは今でも変わらないけど、でも、今、少しずつ近付いてくる整った顔とか、あと、わずか10cm弱で触れてしまう唇だとかに、胸が張り裂けそうになっている。

「今日は上の空だな。何かあったか?」

こんな時に考えごとをしてる俺を咎める訳じゃなく、心配そうにそんなことを言うカイザーが、本当に、本当に好きだと思う。

首を振ると、優しく微笑まれた。
至近距離からそれを見てしまい、頬がカァァっと熱くなるのが分かった。

ああもう、本当に、何でこんなに格好良いんだ。
この笑顔が俺にだけ向けられてるんだと思うと、堪らない。

「何もないならいい。だが、今からは集中しろ。」

それは、キスに、ということなのか、カイザーに、ということなのか。
後者なら、言われるまでもなく集中している。
近頃の俺は、驚く程アンタのことしか考えてないよ。

こくりと頷くと、また微笑まれた。
そのカイザーの表情に、ああやっぱり俺はこの人が好きで好きで堪らなくて、今、凄く幸せなんだ、とか実感したりして、残り1cmの距離を自分から詰めた。


END
本当に小ネタでした。



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