ある日の午後2


彼の横顔はいつだってカードを見つめていて、いつだって僕はそれを横目で見ている。
彼にとっても、僕にとっても、このDMのカードは掛け替えのないもので、このカードがなければ、僕と彼が出会うこともなかった。
それはわかっているのだけれど。

「やっぱこのカードは欠かせないよな」
『クリクリ〜』
「おっ、やっぱりお前もそう思うか!相棒」

ぼんやりとした茶色の浮遊物(しかし自分には本当にぼんやりと、しかも「茶色い」ということが辛うじてわかる程度にしか見えない)に十代は嬉しそうに話し掛ける。
彼にはこの茶色がはっきりとカードの精霊に見えるのだろうけれど、それよりも何よりも、まず僕がここにいることを思い出して欲しい。


「デュエルしようぜ!」

と何の連絡も寄越さずに人のクルーザーに乗り込んで来た揚げ句、デッキを組むから、と十代がカードをあれやこれやしてもう大分経つ。

「まだか?」
「んーーもうちょい!」
「早くしろ」

始めからデュエルをするつもりならデッキくらい予め組んでおいて欲しい。
今日はたまたま一日フリーだから良いものを、こうして一緒に過ごせる時間はあまりないのだ。
そこまで考えてから、僕はそんなにまでコイツと一緒に居たいのか?と自分自身に問い掛ける。
残念ながら答えはイエス。

とんだ物好きだな僕も。

呆れつつ、それでも不思議と唇は笑みを象る。
だってこの脳天気で楽天家、おまけにデュエルのこと以外は頭空っぽのこの男に、僕は心底惚れ込んでいる自覚があるから。
それを幸せだと思ってしまっているから。

「出来た!さあ勝負だエド!」
「待ちくたびれた。」
「悪かったって!」
「ふん…」

場所は自分専用クルーザーの中。ディスクを使うわけには行かないから、小さなテーブル上のカードゲーム。それでもDMはDMだし真剣勝負。

「今回は?」
「勿論俺は賭けるぜ!」
「それじゃあ僕も賭けるとするよ」

デュエル開始!

「時計塔のエフェクト発動!カモン、D-HEROドレッドガイ!」
「…っ」
「ドレッドガイのエフェクトで、セメタリーのダッシュガイ、ダイヤモンドガイを特殊召喚する」
「攻撃力3500……」
「今回は僕の勝ちだな、十代。」



「畜生ー!楽しいデュエルだったけど…!」
「約束は約束だ」

僕たちが賭けていたものは、敗者への命令権と、酷くありきたりなものだけれど、それでも万人に行使し古されたその権利は本当に魅力的で、僕たちはしばしばそれを賭けてデュエルする。
ある意味、下手な賭けデュエルよりも悪質な勝負に今回勝利した僕は、うなだれ、それでも充実したデュエルに満足そうにしている十代に告げるのだ。

「今日は一日中一緒にいること」

と。一日中、どこへも行かず、誰とも会わず、ただ二人でゆっくりと過ごしたい、と。
その後返された「なんだ、そんな事でいいのか?言われなくてもそうするつもりだったぜ!」という彼の言葉に、僕は更に返す言葉が見つからなかった。

「たまにはそういうのも良いよなぁー!だから今日はずーっと二人きりだ、な!エド!」

僕が呆気にとられているのを良いことに、デーブル越しに身を乗り出した十代が本当に触れるだけのキスをしてきた。




END

携帯サイトからの移植ブツ。
タイトルセンスには突っ込まないでやって下さい…。。。


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