熱の遣り場
※他の話より若干進んだ描写がありますので、苦手な方はご注意を。
会いたかった、と、それだけ言われて、俺も、と返事をする暇もなく、腰に腕が回り、顔は彼の胸に押し付けられた。
亮って着痩せするタイプだよなぁなんて考えて、自分の腕も彼の背中に回す。
ゆっくりと髪を撫でられて、腰を抱く腕に力が込められた。亮の手が、耳の裏を伝って頬に添えられる。
「上を向いてくれないか」
言葉に促されて上を向くと、彼の碧の瞳が、確かな熱を宿して自分を見つめていて、照れ臭さにカァ…と頬が熱くなったのがわかった。
プロとして活躍する亮と会える時間は少なく、今日だって、かなり強引に予定をずらして亮はアカデミアに来ている。きっと明日の朝には、すぐに船で帰ってしまうのだろう。
仕方がないとは思うけれど、だからこそ、こうして会っているこの時間は、一分一秒たりとも無駄にしたくない。
ゆっくりと近付く唇に緊張して、体が強ばるけれど、「大丈夫だ」とあやすように背中を撫でられて、力が抜ける。そして、ゆっくりと、少しだけ唇が重なる。
じわりと胸の中に熱が生まれて、頭がぼーっとなる。
殆ど何も考えられないのに、何かを話したい。でないと訳のわからない緊張で目を閉じてしまいたくなるからだ。
「あ〜……あ、のさ、」
「何だ?」
「な…何でもない」
「そうか」
ふ、と亮が笑って、その顔にドキリとする。
いつからこんなに好きになったんだろう、とか、こんな調子じゃ絶対に全力でデュエルできない、とか、辛うじて働く頭の端々で色んな思考が巡るけれど、ぼぅっとした頭は、その思考すら奪おうとする。
「アンタといると、頭、変になる…ぼーっとして、なんも考えられなくなる。」
それに、こんなにドキドキして、馬鹿みたいに緊張して、それでもキスとかして欲しいとか思うし、触れたいし触れて欲しい。
「俺も、そんな感じだ。」
「そっか、カイザーも一緒なんだな。」
余裕ぶった彼に、実はそんなに余裕などないことは、よく知っている。
亮は大人っぽいと思うし、確かに大人の落ち着きがあると思う。それにカイザーと呼ばれるのに相応しい貫禄や寛容さも持ち合わせている。
だけれど、その中には恋愛に不器用な一人の普通の男の姿があって。
こんなに好きになったのは、そんな亮に気付いたからだろうか。
どうしよう、好きだ。
普段は射ぬかれそうに鋭い碧が優しく細められた。
「………っ…」
もう一度、今度はしっかりと唇を塞がれる。
押し付ける以上の意図を持って触れてくる唇に、同じくそれ以上の意図を持って唇を開いた。
すぐに割り込んでくる舌に、やや性急に舌を絡める。
求めているのはこちらも同じで、背中に回した手に力を込めて、彼を更に引き寄せて、そうして密着させた身体は確かに熱を持っていて。
舌同士を触れ合わせて絡ませてを繰り返して、時折少しだけ噛み付いてみたりして、角度を変えて、何度も何度も息を吐いてはまた重ねて、もう漏れてくる声とかも気にならない。
ただ気になるのは、とても熱い頬と、速すぎる動悸だけだ。
「ん…っ…ぅ…あ…つい」
息継ぎの合間に訴えると、口の端から透明な水がつぅ…と糸を引いて零れた。
口の中はぐずぐずだ。混ざり合った唾液は未だ口内に溜まって、飲み下す前に再び溢れていった。
顎を伝うそれを亮が舌で舐めて、再びキスをする。
熱いって、言ってるのに。
顔が、身体が、熱くて仕方ない。だけど、きっとそれは亮も同じで、キスの合間にうっすらと瞳を開けると、白い頬に僅かに朱を走らせた亮の顔が間近にあった。
口内から口内に送りこまれる液体をそのまま嚥下する。伸ばした舌がそろそろ辛いけれど、聞こえる彼の吐息だとか、濡れた音だとかが、亮と唇を重ねているということを改めて自覚させてくれる。
「…っっ…は…」
「…十代…」
名前を呼ぶ声はいつもより低くて、それにぞくりと背が震える。
ああ、もうどうしようもなく好きだ。
「カイザー…俺、凄く熱い」
END
カッとなってやった。反省はしているが、後悔はしていない。
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