それは、お互い様だ



「カイザー、デュエルしようぜ!」

卒業までの時間がもうあまりない、という口実で十代は、最近よく俺にデュエルを挑んでくる。
俺も、残り少ないこの、デュエルアカデミアでの生活を、他でもない、十代と過ごしたいと考えている訳だから、何も問題はないのだが。


デュエルの後、敗北したにも関わらず、満面の笑みを浮かべてお決まりのあのポーズを決めた十代は、緊張の解けた脱力感からか、その場に座りこんだ。

「今日も、良いデュエルだった」
「へへ、そっか」

その座り込んだ前に立ち、手を差し伸べてやれば、躊躇うことなくこの手を取って、立ち上がる。

「俺とカイザーとのデュエルが、全部、アンタの言う『良いデュエル』になれば良いと思ってさ。いっつもカイザーのことばっか考えてるんだぜ。」

いつもの様に、輝いた瞳で俺を見上げた十代は、その唇から平気で俺の平常心を破壊する様な言葉を紡ぎだす。
心臓に悪いこと極まりないが、それを、素直に嬉しいと思う。
同時に愛しいとも。

「俺も、いつでもお前のことばかり考えている。」
「…え…」

十代の直感と運、そして、何よりカードを信じ、デュエルを楽しむという、自分とは違ったリスペクトの形を持つデュエルが、どうやって俺を敗るのか。

「お前がどう考え、どういった戦略で俺に挑んでくるのか。」

それが楽しみで仕方がない。そう、思う。
負ける気はさらさらないが。

「もう一度やるか?」
「…………」
「十代?」

うつ向いて反応のない十代に声を掛けると「今、話掛けんな、こっち見んな!」とだけ返って来た。

「どうした、具合が悪いのか?」

どうしたのだろうか、とその顔を覗き込もうとすれば、伸びてきた十代の両手が、俺の頬に添えられた。
そして、そのまま強引に引き寄せられた次の瞬間、頬を赤く染めて、拗ねたような表情を浮かべた十代と目が合った。

「話し掛けんなって言っただろ!」

それに、見るなとも。
照れた顔を見られたくなかったのだろう。
しかし、俺に対しては非常に今更であると、十代は思わなかったのだろうか。

「今更だろう」
「う……」

ここ数ヶ月、俺は十代の一挙一動に感情を振り回されるという、慣れない事態に陥っているのだが、日常、マイペースを崩さないこの少年が今照れる要素が、先程の会話の中にあっただろうか。
いや、ない。

「どうしたんだ?」

何をそんなに照れている?
問いかけると、十代は、無言のまま、俺の頬に添えていた手を俺の背中に回して、そのまま抱き付いてきた。
胸に額を押し付けて来るその仕草は、幼いながらも俺の動悸を狂わせるには十分で。

「アンタ…無意識にも程があるぜ…。そういう所も好きだけどさ。」



それは、お互い様だ。




END

デキてる癖に自覚のないお二人さん。



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