夜空の華
夏の風物詩。
ドンっという独特の音と、空に咲く、一瞬の火の花。
夏休みに帰省しない生徒のために、このDAの創立者である海馬瀬人が企画したらしい花火大会は、ブルー寮の一室からそれを見る十代と、亮、翔、の心を和ませた。
仲間の中では、この三人が実家に帰省しなかった、いわゆる残留組である。
十代が実家には帰らないため、「アニキが残るのなら僕も残るっス!」と翔も残ることを決意し、その結果、丸藤両親から亮に、翔が残るのなら貴方も残りなさい、と、残留命令が下ったのだ。
亮自身もDAに残るつもりでいたから、この命令は願ったり叶ったりであった。
「キレーだなぁ!」
十代は、その茶色の瞳を赤やら青やらに光らせながら、夜空に花が咲く度に、スゲースゲーと子供の様に喜んだ。
「アニキ、子供みたいっス…」
「だって、すげぇじゃん!ただの何もない夜がこんなに綺麗なんだぜ?」
そうして、また窓から夜空を見上げて、「た〜まや〜っ!か〜ぎや〜!」なんて、叫んだりしていた。
夜空に弾ける火の花は、主催者の趣味だろうか、青色に片寄っていたが、大きく咲く花、柳の様に垂れて行く花、面白い形をした花、と、どれも素晴らしく美しい物だった。
「スイカを切ったんだが、食べるか?」
窓の側に座り込んだ十代と翔に、亮がスイカの乗った皿を差し出す。
「凄い!美味しそう!」
「食っていいのか!?」
「ああ、今朝、天上院家から送られて来たものだ。」
二人とも、ヨダレでも垂らしそうな、だらしなく弛んだ顔で、スイカに手を伸ばす。
「そっかぁ、明日香と吹雪さんに感謝だな!いっただきま〜す!」
「美味しいっス〜!!」
旬のスイカは、甘さと、みずみずしさ、それから、種を一つ一つ取り除いたり、一度口に入れてから吐き出したり。
窓辺の風鈴と相まって、夏らしさを演出した。
「なんか、夏って楽しいんだな!」
十代の一言に、亮と翔が耳を傾ける。
「あんまり夏らしいこと、したことなかったからさ、すげー嬉しい!」
亮も翔も、十代の家庭環境は知らない。けれど、二人とも、こうして今、三人で過ごすこの時間を楽しいと、確かに感じている。
そして、十代が楽しんでくれていることが、この兄弟には何より嬉しいのだ。
「夏は、いいぞ。」
「うん、アニキ、今度は僕らの家に来るといいっス!」
「ああ、それは名案だな、翔」
母さんは喜ぶぞ、と、亮は微笑んだ。
「え、良いのか?」
「うんうん、おいでよアニキ!」
翔がにこにこと十代を見上げて、手に持ったスプーンの上に乗る、既に種の抜かれたスイカの断片を口に入れた。
「ああ!サンキューな、翔、亮!」
夜空の花火よりも明るく微笑んだ十代に、「ああ、この笑顔が本当に好きだ」と、兄弟は同じことを思うのであった。
夜空では相変わらず青の比率が多い花が、今、満開を迎えていた。
END
DA夏捏造。
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